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「低カロリーだからハイボール」「ポリフェノールが多いから赤ワイン」? 健康を気にして注文する酒を考えるのもいいが、何をつまみとして食べるかのほうが実は重要だ。
「肝臓のアルコール分解能力は一定のため、まずはそれをいかにオーバーしないようにするかがつまみの選択のカギ」と自治医科大学附属さいたま医療センター消化器内科の肝臓専門医、浅部伸一氏は言う。アルコールの約90%は胃を素通りして小腸から吸収され、肝臓で分解される。胃に食べ物があればアルコールがとどまり、「時間稼ぎ」ができるため、肝臓に負担をかけにくい。まずはしっかりつまみも食べることが大事だ。
ただ、何を食べてもよいわけではない。体のことを考えれば避けたい「要注意のつまみ」もある。
浅部氏が筆頭に挙げたのは、何とレバー。栄養満点で肝臓の働きを助けてくれそうなイメージだが、気にするべきはレバーに含まれる鉄分だという。「男性はそもそも鉄分不足になりにくい。特に酒飲みで肝臓を酷使する人や脂肪肝の人は鉄が蓄積しやすい」(浅部氏)。鉄分の過剰摂取はC型肝炎や脂肪肝を進行させるリスクもある。
定番メニューのポテトサラダやフライドポテトも要注意だ。「油を使った料理は消化に時間がかかるためアルコールを胃にとどめておく効果は期待できる」(浅部氏)とするものの、やはり脂質や糖質が多く、エネルギー過多から肥満につながる恐れはある。
では「健康つまみ」とは何か。必須なのは肝機能を高める「タンパク質」と、アルコール分解で消費される「ビタミンB1」だ。ビタミンB1の不足は翌日の疲れにも直結する。
豚肉料理ならタンパク質とビタミンB1の両方を一度に取れる。煮豆など、大豆に含まれる植物性のタンパク質も肝機能向上が期待できるという。
「食物繊維」も重要だ。食物繊維は消化に時間がかかるため、油料理と同様にアルコールの滞留時間を延ばし、肝臓を間接的にサポートする。
これらに加えて浅部氏が強く薦めるのが水だ。酒を飲むとアルコールの利尿作用で、飲酒量の1.5倍もの水分を失うといわれている。普段なら夜中に脱水症状で喉が渇けば目が覚めるが、「酔っているとそのまま寝続けてしまい、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まる」(浅部氏)。健康的に飲むためには、水も忘れずに注文しておきたい。
■要注意つまみ
【男性は鉄分の過剰摂取に注意】
アルコールを分解する肝臓に悪影響を及ぼしてしまう可能性があるのは、意外にも鉄分豊富な料理だ。実は男性では鉄分不足になる人が少なく、過剰摂取になりやすいという。炭水化物や脂質が多く含まれるフライドポテトやポテトサラダも、高エネルギーのため要注意だ。
【レバー料理】鉄分
鉄分を多く含むレバーだが、「実は男性は鉄分不足になりにくい」(浅部氏)。鉄が蓄積すると脂肪肝などを悪化させるリスクもある
【ポテトサラダ】【マカロニサラダ】糖質、脂質
「サラダ」と名は付くものの、ジャガイモやマカロニは炭水化物でエネルギーは高めだ。消化に時間がかかるので、何も食べないよりはアルコールの吸収を遅くする効果はある
【シジミ料理】鉄分、塩分
シジミもレバーと同様に鉄分を多く含むため注意したい食材。「鉄分が肝臓に蓄積すると炎症が悪化しNASH(非アルコール性脂肪肝)が進行するリスクが高まる」(浅部氏)。同時に摂取する塩分の量にも気を付けたい
【フライドポテト】糖質、脂質
「健康に良くない」と分かっていながらも注文してしまう筆頭候補。ビールにもよく合うが、炭水化物、脂質、塩分のトリプルパンチで食べ過ぎには注意したい
【目からウロコ!左党ほどウコンには要注意?】
「飲む前に飲む」というイメージが広まっているウコンもレバーやシジミと同じく鉄分が多く含まれているので、過剰摂取に気を付けたい。また、「ウコンによる肝障害もいくつか報告されているため、よく酒を飲む人や肝機能に問題がある人には薦められない」(浅部氏)。
■健康つまみ
【肝臓の機能を高めるのはタンパク質とビタミンB1】
「健康つまみ」は、いかに肝臓をサポートするかで選びたい。肝機能を高める働きのあるタンパク質やビタミンB1は豚肉に多く含まれる。タンパク質は大豆から取るのもよい。また、食物繊維は胃にとどまり、アルコールの吸収を穏やかにする。
【豚肉料理】タンパク質、ビタミンB1
タンパク質が分解されてできるアミノ酸はアルコール代謝を促進。ビタミンB1はアルコールの分解に使われ、不足すると翌日の疲労感が増す。タンパク質とビタミンB1を含むのは豚肉だ
【きんぴら】食物繊維
食物繊維を豊富に含むきんぴらごぼうや切り干し大根などの根菜料理は、消化に時間がかかる料理だ。そのため、アルコールの胃での滞留時間を長くし、小腸からの吸収を穏やかにする効果を期待できる
【大豆料理】タンパク質
大豆には「良質な植物性のタンパク質が含まれており、肝機能の向上が見込める」(浅部氏)。枝豆や納豆でももちろんいい
【チーズ】タンパク質
チーズはタンパク質を含む他、「消化吸収されにくく腹持ちが良いため、アルコールの吸収が穏やかになる」(浅部氏)。塩分の取り過ぎには注意
【ナッツ】食物繊維
他の料理ですでに腹が満ちていれば乾き物のナッツ類もよい。食物繊維や不飽和脂肪酸を多く含む。素焼きでない場合は塩分や糖分などの摂取量に気を付けたい
【メカニズム:アルコールは小腸で吸収】
胃に入ったアルコールはそのほとんどが小腸で吸収され、血管を経由して肝臓の酵素で分解される。あらかじめ胃に多くの食べ物を入れておけばアルコールは小腸へ少しずつ送られるため、吸収が穏やかで肝臓の負担を軽くできる。食物繊維などはアルコールの胃での滞留時間を延ばし、タンパク質やビタミンB1は肝臓の処理能力を高める。
(料理写真 PIXTA)
[日経トレンディ2018年4月号の記事を再構成]
http://www.henshikou.com/blog/blog_20190401_15
「毎日お通じがあるから、私は便秘ではない」と思っていないだろうか。日経ヘルス読者の約6割が、出ていてもすっきりしていない、時間がかかる「隠れ便秘」であることがわかった。
本来、お通じは「トイレで1分」&「スッキリ感がある」が基本。それが毎日続く「美腸」になるための習慣や対策を専門家に聞いた。
■1分程度ですっきり出るのがいいお通じ
栄養の吸収や免疫などをつかさどる腸は、私たちにとって大切な存在。だが、お通じがよくないと、腸内環境が悪化して本領を発揮することができない。
日本初の便秘ガイドライン作成にかかわった横浜市立大大学院医学研究科・肝胆膵消化器病学教室の中島淳教授によると、「いいお通じは、トイレにいったら1分程度で出て、残便感がない」と説明する。ただ「出る」だけでなく、「1分」というスピードと「すっきり感」が大事というわけだ。読者調査で便秘を自覚していたのは約4割だが、実際は約6割がすっきり感がない、時間がかかるなど自覚していない「隠れ便秘」だった。
最近まで便秘の定義は明確ではなかったが、2017年10月に消化器内科医らで組織する「慢性便秘の診断・治療研究会」は、『慢性便秘症診療ガイドライン』を作成。日本で初めて「便秘」を定義した。
それによると、便秘とは、「本来なら体外に排出すべき糞便を、十分量かつ快適に排出できない状態」のこと。これまでは「お通じが3日以上ないと便秘」といわれることが多かったが、「回数よりも、すっきり出たかどうかが重要」(中島教授)という。
なぜ「すっきり感」にこだわるかというと、それが「出しきった」ことの証しだから。「腹痛や腹部の膨満感、残便感があって困っているなら、医師に相談を」(中島教授)という。
また、「肛門は口の中と同じくらい繊細な感覚器官。ゴマ1粒分でもあれば違和感が残る。そんな状態では、何をしていてもお通じが気になって、毎日を楽しく過ごすのは難しいでしょう」(中島教授)。
まずは、腸の専門家が薦める3つの「すっきり腸習慣」を試してみよう。すっきり感が毎日続くようになれば、うれしい美腸効果が得られる。
■専門家が薦める3つの「すっきり腸習慣」
すっきり習慣1:トイレの姿勢は考える人
「日本人は、股関節を深く曲げて前かがみになるほうがお通じがスムーズになる」と中島教授。「考える人」のポーズをとるのがお薦めだ。座った状態で前かがみになると肛門と直腸の間の角度が緩くなり、いきまなくてもスルリと出る。
すっきり習慣2:朝1杯の水をのむ
体が脱水状態だと、大腸は便から水分を吸収しようとするので便がコチコチに。「朝はしっかり水分を取って」(中島教授)
すっきり習慣3:下剤の使いすぎは避ける
刺激が強い下剤は使いすぎると腸管が薄くなり働きが鈍くなる。便秘薬の正しい使い方を知ろう。
【あなたはどれ? タイプ別「美腸テクニック」】
現代女性に多く見られる、便秘を招く生活習慣。近年、特に多いと専門家が口をそろえるのは「運動不足」。「腸は、物理的に揺さぶることが必要。長時間座りっぱなしでは腸が動かない」と後藤院長はいう。
ストレスの影響も大きい。便秘に悩む女性を多数救っている、コロンハイドロセラピストの斎藤早苗さんは「腸と脳は連絡を取り合っていて、ストレスがあると腸の動きが悪くなります」と話す。
また、お通じを我慢し続けるのも便秘を招く。「身だしなみを優先する、職場のトイレを使うのが恥ずかしいなどで、我慢してしまう女性が多い」(中島教授)。糖質オフダイエットで穀類を食べなかったり、食物繊維をとる量が少ない人も要注意。夜遅くにドカ食いするのも問題だ。「胃が空っぽの状態で寝ることで、腸の強い収縮活動が起きて便を押し流すが、寝る3時間前以内に食事をしているとそれが働かない」(斎藤さん)。あなたはどうだろうか。次のチェックリストで、1つでも当てはまれば対策を。当てはまる項目が多かった場合は、気になるものからトライしよう(チェック項目は、後藤利夫・新宿大腸クリニック院長への取材に基づき編集部で作成)。
■運動不足便秘(運動不足で腸が鈍い状態)
□1日8時間はパソコンの前に座っている
□階段を避けて、エスカレーターやエレベーターを使う
□ちょっとした買い物でも車を使う
□体をねじる、ひねる動きはほとんどしない
→まずはここから: 軽い運動をしよう
腹筋を使ってひねることで大腸が刺激されてぜんどう運動が促進される。ウオーキングや軽いひねり運動でいいので、座っている時間を減らすように心がけよう。
■ストレス便秘(ストレスで腸の動きが鈍る)
□旅行や試験前に緊張するとお腹を壊す
□下痢と便秘を繰り返す
□くよくよしたりイライラしやすい
□日々ストレスを感じている
→まずはここから: リラックスする時間を作る
ストレスがかかると、腸がけいれんを起こしてしまい、腸の内容物が正常に運ばれなくなる。その結果、便秘になってしまう。まずは、リラックスを心がけて。
■我慢便秘(我慢を繰り返すと出なくなる)
□朝は忙しくてトイレに行けない
□便意を感じるとき近くにトイレがないことが多い
□家以外の、職場や公共機関で便をする気にはなれない
□おならは我慢する
→まずはここから: トイレに行く時間を作る
忙しくて後回しにしたり、女性は自宅以外のトイレで排便をすることに抵抗を感じる人が多い。「自分の生活パターンのなかで行けるタイミングを見つけて」(中島教授)
■夜遅食べ便秘(夕食を食べるのが遅い)
□夜遅くに何かを食べてしまう
□朝起きたときに胃もたれ感がある
□毎日の食事時間はばらばら
□夕食は揚げ物や肉が多い。お酒を飲むことも。
→まずはここから: 空腹で寝て腸の掃除力をアップ
胃がいっぱいのまま寝ると、腸が食べた物を肛門のほうへ押し出して掃除する収縮活動が起きにくい。夕食から眠るまで3時間以上取れないときは、何も食べずに寝るのが理想的だ。
■ダイエット便秘(生野菜ばかり食べる、糖質オフ)
□糖質オフを実践してご飯を食べていない
□ダイエットのため食事量を減らしている
□生野菜ばかり食べている
□ダイエットのために下剤を頻繁にのむ
→まずはここから: 食物繊維をとる
生野菜だけで十分な食物繊維をとるのは難しい。糖質オフなどダイエットで食事量を減らしていると、便の材料が不足して便秘に。食物繊維の働きをするでんぷんでかさを増そう。
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飲み過ぎの左党の多くが気にする「中性脂肪」。一般に、飲酒によって中性脂肪が上がるといわれているが、適量までなら中性脂肪は上がらず、むしろ、気をつけるべきなのは「おつまみ」だという。では、どんなものを減らし、どんなものを積極的に食べればいいのか。酒ジャーナリストの葉石かおりが栗原クリニック東京・日本橋の院長・栗原毅さんに聞いたところ、積極的に摂取したい食材として「オサカナスキヤネ」というキーワードが浮上した。一体何だろう?
◇ ◇ ◇
「今年こそは食生活の見直しを!」と心に誓いながらも、できていない人は多いだろう。左党の皆さんはどうだろうか?
さて、前回「中性脂肪の元凶 実は『酒』より『おつまみ』だった?」では、飲酒と中性脂肪の関係について栗原さんに解説していただいた。中性脂肪が過多になると、動脈硬化を進行させるのはもちろん、善玉であるHDLコレステロールを減らしたり、悪玉であるLDLコレステロールを小型化させ、超悪玉コレステロールを生むといった悪影響がある。
そして、一般に飲酒によって中性脂肪が上がるといわれているが、適量までなら中性脂肪は上がらない(もちろん飲み過ぎはダメ)という研究結果があることをお伝えした。さらに飲酒には、善玉のHDLコレステロールを上げるといううれしい効果もある。
適量までとはいえ、ある程度飲んでも中性脂肪が上がらないというのは、左党にとってうれしい話だ。では、酒飲みに中性脂肪が高い人が多いように思えるのはなぜか。それは「おつまみを食べ過ぎていることが原因」だと栗原さんは言い切る。
そこで今回は、中性脂肪を下げるためには、お酒のおつまみ、そして日々の食事をどうすればいいかについて、栗原さんに聞いていく。
■脂っこいおつまみを控えればOK?
まず栗原さんに、おつまみがなぜ中性脂肪を増やすのかを聞いてみた。脂肪というと、脂っこいものが悪そうに思えるが、やはり脂っこいおつまみが問題なのだろうか。
「脂肪と聞くと、脂肪分の多い肉などを想像しますが、中性脂肪は糖質によって増えます。糖質はカラダの中に入るとブドウ糖となり、小腸で吸収され、血液へと送られます。すると血糖値が急上昇し、血糖値を下げるためにインスリンというホルモンが多量に分泌されます。そして、血液中の糖は中性脂肪となり、肝臓や脂肪細胞に蓄積されるのです」(栗原さん)
「中性脂肪を下げるには、血糖値が急上昇しないような食事にする必要があります。このことから分かるように、おつまみはもちろん、普段の食事の糖質を減らすことが大切なのです」(栗原さん)
アルコール、そして油ギッシュな肉より、まずは糖質を制限することが大事だったとは! 私も糖質のとり過ぎが肥満につながることは知っていたが、中性脂肪とこんなに密接な関係だったなんて知らなかった。
実際、糖質制限をした場合、血糖値はもちろん、中性脂肪値も下がったという研究報告もある(N Engl J Med. 2008;359:229-241.)。この研究結果では、脂質を控える「カロリー制限食」よりも、糖質だけ控えてたんぱく質、脂質、カロリーの制限がない「糖質制限食」のほうが中性脂肪値が下がっている。
■糖質は「ちょいオフ」でいい
しかし内臓にしっかりついた中性脂肪を減らすとなると、かなりハードな糖質制限になるのだろうか……。すると、栗原さんからこんな答えが返ってきた。
「糖質は『ちょいオフ』でいいんです。極端な糖質制限にはリスクがある可能性があるうえに、続けにくい。リバウンドの危険もあります。いつもより意識して少し減らすだけで十分です。日本人の男性なら1日の糖質摂取量はたいてい300g以上です[注1]。目安としてこれを250g程度まで減らしましょう。女性ならば200g程度にしてください。これなら、ごはんの盛りを7、8割と軽めにするだけで実現できます」(栗原さん)。なお、実際には400g以上とっている人も少なくないので、そういう人は意識的にもう少し減らすとよい。
[注1] 2015年に栗原さんとサッポロビールが実施した「食習慣と糖に関する20~60代男女1000人の実態調査」では、1日に摂取していた糖質量の平均は、男性309g、女性332g。
栗原さんからそう言っていただいてホッとした。このくらいなら、ズボラな私でもなんとか実践できそうだ。
減らすにあたって、食品に含まれる糖質量も大まかに把握しておくといいだろう。ごはんは、茶碗1杯を150gとすると、含まれる糖質量は55.2g。3食食ベると合計165.6gとなる。主食だけでなく、おかずやおつまみ、調味料にも糖質は含まれているので、それを考えるとあっという間に300gは超える。
ポテトサラダなどは、「サラダ」とあるので体に悪くなさそうと思いがちだが、ジャガイモは1個(150g)当たり24.5gと、糖質を多く含んでいる。このほか、コーン、カボチャ、サツマイモなども糖質が多いので注意したい。
主食やおかず・おつまみだけ気にしていればいいわけではない。「糖質は、食べ物だけでなく果汁を使った飲み物にもたっぷり含まれていますので、これにも注意してください」(栗原さん)。野菜不足を補うために、野菜ジュースを飲んでいる人も多いと思うが、野菜ジュースには果物が入っているものが多く、糖質が意外に多いのでこれも注意が必要だ。200mLパックの野菜ジュースは、商品によるがたいてい14~20g程度の糖質が含まれている。
ちなみに、ビジネスパーソンが慌てて食べる昼食などでよくある「おにぎり2個と野菜ジュースという組み合わせ」は、それだけで80~100g程度の糖質量になる。
お酒を選ぶ際も、糖質が少ないものを選んだほうがよい。「注意したいのは、たっぷりの砂糖と甲類焼酎に漬けて作る梅酒(リキュール類)や、糖質がたっぷり含まれているサワーなどです。一方、本格焼酎やウイスキーなどの蒸留酒単体であれば糖質ゼロです」(栗原さん)。日本酒、ビールなどの醸造酒は糖質がやや多い。醸造酒の中ではワインは低糖質だ。
お酒の摂取が脂質に対していい効果があるのは前回「中性脂肪の元凶 実は『酒』より『おつまみ』だった?」で解説した通りだが、効果が期待できるのは適量まで。大量の飲酒は脂肪肝やアルコール性肝炎、そしてアルコール依存症につながる危険性がある。栗原さんは、「他の疾患への影響も考慮すると、日本酒なら1合、ビールなら中ジョッキ1杯、ワインなら2杯までが理想的です。ただし、毎日でなければ、中ジョッキ2杯、日本酒なら2合、ワインなら3杯までは許容範囲でしょう」と話す。
■積極的に摂取してほしい「オサカナスキヤネ」
栗原さんは、血液をサラサラにしたり、中性脂肪を増やさないためにも、積極的に摂取してほしい食材があると話す。具体的には、下表の食品群だ。「頭文字を取って、『オサカナスキヤネ』と覚えておきましょう」(栗原さん)
「オ」はお茶またはオリーブオイル、「サ」は魚、「カ」は海藻類、「ナ」は納豆、「ス」は酢、「キ」はキノコ類、「ヤ」は野菜、「ネ」はタマネギ、長ネギ、そしてニンニクも含まれる。栗原さんは、「毎日全ての食材をとるのが理想ですが、難しい場合は3日単位でとるようにするといい」と話す。特殊な食材は何もなく、スーパーで簡単に入手できるものばかり。これならすぐに取り入れられそうだ。
「中性脂肪を増やさないようにするには、血糖値の上昇を緩やかにする必要があります。このために有効なのが、糖質をとる前に、食物繊維や不飽和脂肪酸を先にとることです」(栗原さん)。「オサカナスキヤネ」の中でいうと食物繊維の多い野菜、キノコ、海藻、オリーブオイルがそれに当たる。
栗原さんは「食べる順番やスピードも大事」だという。「食べるスピードはゆっくりと。早食いはドカ食い、肥満のもとです。1回の食事に15分かける『スロー食べ』を意識してください。こうした食べ方を習慣にできれば中性脂肪が上がりにくくなります」(栗原さん)
このほか、冷たい飲み物も極力控えたほうがいいとアドバイスする。「食事の際の飲み物は冷たいものではなく、温かいものを選ぶようにしましょう。冷たい飲み物は血流が悪くなり、血液の温度を下げます。それに伴い血液の脂も冷え、血液がドロドロになり、さらには代謝も悪くなります」(栗原さん)
なるほど! ということは糖質ゼロの本格焼酎のお湯割りとともに、キノコと海藻のサラダにオリーブオイルベースのドレッシングをかけて最初に食べ、〆鯖(シメサバ)と納豆をメインディッシュにするなんてベストの組み合わせではないか。
また、「オサカナスキヤネ」の食材のほか、豆腐、ラム肉もお勧めだという。これからの季節なら湯豆腐で一杯なんていうのもいい。ニンニクをたっぷり入れたジンギスカンもカラダが温まりそうだ。
※次回は「運動」について紹介します。
(エッセイスト・酒ジャーナリスト 葉石かおり、イラスト 堀江篤史、図版 増田真一)
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トイレに行った後もすっきりしない、便がたまっておなかが痛くなる……。便秘は若い女性だけでなく、60歳以上の中高年の男女が多く悩まされている症状だ。「たかが便秘」と放置していると生活の質を落とし、命の危険につながることもある。
便秘の治療薬を販売するマイランEPD合同会社は、2017年11月22日に慢性便秘症についてのメディアセミナーを開催。2017年10月に日本で初めて作成された便秘のガイドライン、「慢性便秘症診療ガイドライン2017」の作成に携わった横浜市立大学大学院医学研究科・肝胆膵消化器病学教室主任教授の中島淳氏が講演を行った。その中から、便秘の現状と治療のポイントを紹介しよう。
■便秘は「回数」だけでは決まらない
若い女性に多いというイメージがある便秘。しかし歳を取るにつれて、男女ともに便秘に悩む人が増える。2013年の国民生活基礎調査によると、80歳以上では10人に1人以上が便秘の症状を抱えている(図1)。「便秘は60歳以下では女性に多いのですが、60歳を超えると男女ともに増えて、男女差がなくなってきます。介護が必要になったことをきっかけに便秘になる方も多く、今後高齢化が進むと、ますます便秘で悩む患者さんは増えるでしょう」と中島氏。
そもそも便秘とはどのような状態なのだろうか。2017年10月に日本で初めて作成された「慢性便秘症診療ガイドライン2017」(日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断治療研究会・編)では、便秘は「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されている。
この「十分量かつ快適に排出できない状態」には、大きく分けて2つのタイプがある。一つは、排便の回数や量が少ないため、便が腸の中に滞ってしまうタイプ。もう一つは、量や回数は問題ないが、便が快適に排出できず、残便感があるタイプだ。
便秘とは……
本来体外に排出すべき糞便を、十分量かつ快適に排出できない状態
(以下のタイプに分けられる)
(1)排便の回数や量が少ないため、便が腸の中に滞るタイプ
(2)量や回数は問題ないが、便が快適に排出できず、残便感があるタイプ
よくある誤解は、「排便の回数が多ければ、便秘ではない」というものだ。毎日出ていても、便が硬いと力んでもすっきり出せない。このように出すときに不快感があったり、出した後に残便感があったりする場合も実は便秘といえる。中島氏は、「便が硬いと一度に出せないために、1日に何回もトイレに行く人がいます。すると、医師によっては、排便の回数だけに注目して、『便秘』ではなく『下痢』と判断してしまう場合もあります」と話す。
男性の場合は「恥ずかしい」という理由で便秘を隠す人もいる。しかし、便秘を長期間放置すると、たまった便によって腸に穴が空き、最悪の場合は死亡してしまうケースもある。さらに便秘は大腸がんなどの重篤な腸の疾患が原因になっていることもあるため、病院で正しい診断を受けることが重要だ。米国の調査では、便秘の人とそうでない人を比べると、便秘の人は生存率が低いというデータがある(図2)。「たかが便秘」とあなどることはできない。
■エビデンスのある治療薬が次々と登場
便秘の治療では、薬を飲む前にまず生活指導が行われる。基本は、適度に運動をして十分な睡眠をとること、そして食物繊維不足に気を付けることだ。「便秘の患者さんの中には、1日2gくらいしか食物繊維をとっていない人もいます。わが国の推奨量は、成人男性で1日20g以上、成人女性で1日18g以上です。極端なダイエットでも食物繊維の摂取量が減り、便秘の原因になります。私の経験では、ダイエットが原因で便秘になると、その後10~20年は便秘が治らないことがあります。食生活の乱れは便秘の大元です」と中島氏は話す。これらの生活習慣の見直しを行っても便秘が改善しない場合は、飲み薬を使用する。
【酸化マグネシウム】便を軟らかくするが、高齢者や腎機能の悪い人は要注意
日本で古くから広く使われている薬は、酸化マグネシウム(商品名:マグミットほか)だ。この薬は、腸内で胃酸や膵液(すいえき)と反応することで塩類の濃度を高め、浸透圧を働かせて腸管から腸内へ水分を移動させ、便を軟らかくする。
酸化マグネシウムは、繰り返し使用しても効果が弱まる(便秘が悪化する)ことがないという利点があるが、腎機能が低い人や高齢者が長期間にわたって使うと、血中のマグネシウム濃度が上がり、高マグネシウム血症になる可能性がある。高マグネシウム血症は、だるさや脱力、血圧低下などを引き起こし、命に関わる場合があるため、高齢者や腎臓が悪い人が酸化マグネシウムを飲む場合は慎重に使用し、定期的に血中のマグネシウム濃度を測定する必要がある。
【センナなどの刺激性下剤】作用が非常に強力で、依存性が高い
もう1つ身近な便秘薬といえば、センナを代表とする刺激性下剤だろう。刺激性下剤は、大腸の蠕動(ぜんどう)運動を促して排便を起こす効果の強い薬だ。「日本は刺激性下剤大国といわれています。刺激性下剤は薬局でも売られている薬ですが、作用が非常に強力で、毎日飲むと水のような便になってしまいます。依存性が高く、飲む量がどんどん増えるので注意が必要です」(中島氏)。
【ルビプロストン】慢性便秘症への確かなエビデンスあり。吐き気に注意
近年、便秘の治療薬は進歩している。2012年から使えるようになったルビプロストン(商品名:アミティーザ)は、便秘治療薬としては32年ぶりの新薬だ。「これまでの便秘薬には、臨床試験に基づいた科学的根拠(エビデンス)はありませんでした。ルビプロストンは慢性便秘症患者を対象とした臨床試験を経て、どんな患者にどれくらい効果があるかという科学的根拠が確認されている画期的な薬です」(中島氏)
ルビプロストンは上皮機能変容薬と呼ばれ、今回のガイドラインで推奨度が最も高いランクに評価されている。小腸に働きかけて水分の分泌を促すことにより、便を軟らかくして自然に排出しやすくする。慢性便秘症の患者242人が、ルビプロストンを1日48μg(2カプセル)、4週間服用した臨床試験では、プラセボを服用したグループと比べて24時間以内に自発的な排便が有意に増加し、硬便やいきみなどの症状も有意に改善した[注1]。また、48週間飲み続けても効きにくくなることはなく、効果が持続するという臨床試験の報告もある[注2]。
注意点として、ルビプロストンは妊婦には使用できない。また、「若い女性では吐き気が起こることがあります。ただ、高齢者には起こりにくいため、酸化マグネシウムを使いにくい高齢者には有効性が高い薬です」と中島氏は話す。
なお、上皮機能変容薬にはルビプロストンのほかに、2017年3月に登場したリナクロチド(商品名:リンゼス)という薬がある。現在リナクロチドは、過敏性腸症候群[注3]の便秘型に限って使われているが、2017年9月に、新たに慢性便秘症に関する効能・効果追加の承認申請が行われており、承認されれば、慢性便秘症の患者にも使うことができるようになる見込みだ。
■普段は「便を軟らかくする薬」、つらいときは「刺激性下剤」
では、これらの薬を医師はどのように組み合わせて使うのだろうか。中島氏によると、「普段はルビプロストンや酸化マグネシウムなどの便を軟らかくする薬を使い、便が出なくてつらい時だけ刺激性下剤を飲む」ことが勧められるという。
[注1] Johanson JF, et al. Am J Gastroenterol. 2008 Jan; 103(1): 170-177.
[注2] Fukudo S, et al. Clin Gastroenterol Hepatol. 2015;13:297-301.
[注3] 過敏性腸症候群:腸管に明らかな異常が見つからないにもかかわらず、腸の機能異常が起こり、腹痛あるいは腹部の不快感と、それに関連する便通の異常が続いている状態。下痢型と便秘型がある。
治療のゴールは、熟したバナナくらいの軟らかさと形の便になることだ。便の硬さや形状を示す指標があり、日本人は4が理想とされる(図3)。
4のような便は、トイレに行くとだいたい数十秒以内に排便できるという。これがすっきりと全て出し切る完全排便だ。しかし、1、2のように便が硬くなると、便がひび割れるため中に残る。半分くらい残ることもあり、強い残便感が起こる。「肛門は鼻や口と同じくらい繊細な感覚臓器です。そこに便のかけらが残ると非常に不快なわけです」(中島氏)
反対に、水のような便になればすべて出るのだろうか。「水のような状態の便を出そうとすると、下に出ると同時に上にも逆流して残ってしまいます。下痢のときに何度もトイレに行くのは、水状の便は一気に出すことができないためです」(中島氏)。
硬すぎず軟らかすぎない理想の便になることで、すっきりとした排便が可能になる。上手な薬の組み合わせで便秘をコントロールすれば、理想の便の硬さを保つことができる。
■トイレを我慢し続けると、便意がなくなることも
生活習慣の改善、薬による治療に加えて、最後の仕上げとして必要なのが「我慢せずにトイレに行く」ということだ。トイレに行くことを我慢していると、その状態に慣れて便意そのものがなってしまう。便意がない人は女性や子どもに増えていると中島氏は指摘する。「便意を感じられなくなると、便が肛門あたりまできていても便が出せません。患者さんの中にはウォシュレットなどで刺激して出す人もいます」(中島氏)。浣腸や病院で便をかき出す処置を行うと、肛門を傷つけて便の感覚がさらになくなってしまう。そうなる前に、トイレを我慢しすぎないことも大切だ。
トイレに行ったら、前かがみの姿勢をとると便が出やすくなる。ロダンの彫刻「考える人」のようなポーズをイメージしよう。普段、直腸は肛門の手前で大きく曲がっているため便が出にくいようになっている。座って前傾姿勢をとると、直腸から肛門までがまっすぐになり、おなかにも圧がかかりやすくなる。
便秘は命にも関わり、生活の質を大きく左右する。重症化する前に適切な治療を受けることが重要だ。症状を隠したり、市販薬だけに頼ったりせず、一度病院で相談してみてはいかがだろうか。すっきりした排便で快適な生活を手に入れよう。
http://www.henshikou.com/blog/blog_20190401_18
酒席が重なると多くの酒飲みが気にするのが、体重、そして脂質ではないだろうか。一般に、酒飲みは中性脂肪やコレステロールも高そうだと思われがちだが、実際はどうなのだろう。酒ジャーナリストの葉石かおりが、中性脂肪やコレステロール、脂肪肝関連の著書を多く手掛けてきた栗原クリニック東京・日本橋の院長・栗原毅さんに話を聞いた。
■中性脂肪はイヤだけど、酒は我慢できない
酒飲みは、中性脂肪が高い。コレステロールも高そうだ――。巷(ちまた)ではそう思われているが、実際はどうなのだろう?
実のところダイエット&筋トレする前の私もそう。体重は標準値以内なのに、体脂肪と中性脂肪がやたら多い、典型的な「隠れ肥満」だった。肉で言うならサシがいっぱい入った神戸牛といったところだろうか。「今のままの生活を続けていたら、神戸牛どころか、豚バラ肉まっしぐら」と思い、筋トレをがんばって何とか中性脂肪、それにコレステロールとも基準値に下げたものの、一抹の不安が残る。それは酒を我慢することができないからだ。
厚生労働省のホームページを見ると、「アルコール摂取量に比例して中性脂肪は増加します」と怖い説明がある。さらには「過度のアルコール摂取は脂肪肝の原因になる」とも……[注1]。
これを読むと、酒をやめない限り中性脂肪は増加し続け、あっという間に脂肪肝になってしまうのでは? と悲観してしまう。しかし酒をやめることは何があろうと断じてできない。でも中性脂肪が高いのはイヤだ。
などと書いておきながら、恥ずかしいのだが、正直なところ、私は中性脂肪について、正しく理解できているのか自信がない。脂質が増えて、メタボになって、血液がドロドロになり、体に悪そう……というイメージはあるものの、悪いのは中性脂肪よりコレステロールという印象が強い。中性脂肪はどうなのだろうか? そして、酒をやめなくちゃ下がらないのだろうか?
そこで今回は、中性脂肪やコレステロール、そして脂肪肝についての著書を多数出している栗原クリニック 東京・日本橋の院長・栗原毅さんを訪ねた。栗原さんは、肝臓専門医で、「血液サラサラ」の名付け親でもある。
■コレステロールより中性脂肪のほうが問題?
先生、中性脂肪って何なのでしょう? そんな悪者なのですか?
[注1]https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-014.html
「中性脂肪とはヒトのカラダに存在する脂質の一種で、身体活動のエネルギー源になります。体脂肪のほとんどが中性脂肪で、別名『トリグリセリド(TG)』と呼ばれています。主な働きは食べ物が足りないときのエネルギーの貯蔵庫、内臓の保持、体温を一定に保つなどさまざまです」(栗原さん)
なるほど、中性脂肪はカラダにとって重要な役割を果たしてくれているではないか。とはいえ、過ぎたるは及ばざるがごとし。中性脂肪が多すぎることが問題なのだろうか。素人的にはコレステロールのほうが厄介で、中性脂肪は多少、多くても問題ないように思うのだが……。
「それは違います。中性脂肪はコレステロールより注意しなくてはなりません。中性脂肪は肝臓で作られるほか、小腸でも作られます。過剰になると小腸の血管からしみ出て、周囲の内臓や血管に蓄積されます。いわば内臓肥満型になります。また血中の中性脂肪が高くなると脂質異常症の1つ『高トリグリセリド血症』となり、血液がドロドロの状態になります。これによって血管が老化し、動脈硬化を加速させ、心筋梗塞、脳梗塞といった重篤な疾患を引き起こす原因になるのです」(栗原さん)
「一方のコレステロールは、細胞膜や神経細胞を作る材料となります。さらに各種ホルモンや胆汁酸の材料としても使われています。コレステロールというと、何となくカラダに悪いものと思っている方が少なくありませんが、実はカラダにとってなくてはならない大切な存在です」(栗原さん)
「そして、コレステロールには善玉(HDL)と悪玉(LDL)があるのはよく知られています。悪玉(LDL)は低いほうがいいと思われていますが、これも必ずしも正しくありません。少々難しい話になりますが、LDLはコレステロールの『運搬役』、HDLはコレステロールの『回収役』で、いずれも必要なものなのです。問題なのは、HDLコレステロールの不足で、LDLコレステロールが高くても、HDLコレステロールが高ければ基本的に問題ありません」(栗原さん)
なるほど、悪玉のLDLコレステロールだけ高いという状態はよくないが、善玉のHDLコレステロールが高くて、善玉と悪玉のバランスがとれていれば大丈夫というわけだ。
■中性脂肪が多いと、善玉/悪玉コレステロールの比率に影響
そこで栗原さんは「さらに怖いことがある」と話す。実は、中性脂肪が多いと、このHDLコレステロールとLDLコレステロールのバランスを崩してしまうのだという。さらに「超悪玉コレステロール」を生むという。
「中性脂肪が過剰になると、HDLコレステロールが減ります。さらにはLDLコレステロールを小型化し、『小型LDLコレステロール』という『超悪玉コレステロール』を生み出すことも分かってきました。これがまた非常に厄介なのです。超悪玉コレステロールはサイズが小さいため、血管壁に入り込み、蓄積しやすく、酸化されやすいという特性を持っています。また一般的な悪玉コレステロールに比べ、血管内に長くとどまることから、動脈硬化の進行をさらに加速させてしまうのです」(栗原さん)
「繰り返しになりますが、コレステロール単体で見れば、HDLコレステロールの数値が高ければ、LDLコレステロールが高くてもそう問題はありません。しかし中性脂肪が高いと、コレステロールの質が悪くなり、確実に動脈硬化が進むので注意が必要です」(栗原さん)
■中性脂肪値の上昇も脂肪肝も原因は同じだった!
ああ、やはり私は、中性脂肪やコレステロールについて、きちんと理解できていなかったようだ。先生、もしかして左党に多い脂肪肝も中性脂肪が関係しているのでしょうか?
「大いに関係あります。脂肪肝は血液中の中性脂肪の数値が高くなる前に表れる症状なのです。脂肪肝は肝臓の細胞が中性脂肪をためこんで白く膨張した状態を指します。これまで脂肪肝は軽く見られることが多かったのですが、最近では、脂肪肝から「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」に発展することが問題視されるようになりました。これによって肝臓の炎症や壊死が引き起こされ、肝硬変や肝臓がんに早く進展することがあるのです」(栗原さん)
ううむ、こうなると、コレステロールより、中性脂肪のほうが怖いではないか……。肝硬変、肝臓がんになってしまったら、酒とは無縁の生活になってしまう。
■2合くらいまでなら、飲んだほうがいい?
さて、中性脂肪の怖さが理解できたところで、いよいよ本題。アルコールと中性脂肪の関係はどうなのだろうか。一般に「アルコールが中性脂肪を増加させる犯人」のように言われることもあるが、実際はどうなのだろう?
「確かに、アルコールを大量に摂取すると中性脂肪を増やすことにつながると言われています。アルコールの飲み過ぎが『アルコール性脂肪肝』を引き起こすことも知られています。しかし、アルコールは、適量を守って飲めば害にはなりません。適量までなら、むしろ血中の中性脂肪値や脂肪肝などにいい影響を及ぼすのです」(栗原さん)
実際、栗原さんは、過去40年にわたって患者を診てきた中で、多数の脂肪肝患者に接してきたが、アルコールの飲み過ぎで「アルコール性脂肪肝」になる人は多くなかったという。むしろ今は、アルコールを飲まない人の間で脂肪肝が増えているのだという。
「このため、私は『アルコール単体では中性脂肪の数値はなかなか上がらない』と考えています。実際、私の患者で日本酒1升、ブランデー1本を一晩で飲んでしまう方がいるのですが、この方の中性脂肪は基準値以内です。この方はかなり極端にしても、中性脂肪を基準にして見た場合、お酒は全く飲まないより、日本酒なら1~2合までならむしろ飲んだほうがいいでしょう。もちろん飲み過ぎはダメですが、実際、患者にも適量飲酒を勧めています」(栗原さん)
「飲酒量と中性脂肪値や脂肪肝などの関係を調べた研究結果で、1~2合くらいまでの飲酒(アルコール量20~40g未満)であれば、中性脂肪値は上がらないという報告も出ています」(栗原さん)
もちろん飲み過ぎはダメとしても、「適量までなら、アルコールだけでは中性脂肪が上がらない」とはなんてうれしい結果だろう!
この研究は、北海道・苫小牧市にある王子総合病院健診センターで健康診断を実施した男女3185人を、「お酒を飲まない人」「1日当たりアルコール20g未満飲む人」「20~40g未満飲む人」「40~60g未満飲む人」「60g以上飲む人」の5グループに分け、肝機能値や、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪などを調べたデータだ(肝臓. 2010;51(9):501-507.)。
それによると、中性脂肪の数値はアルコール量が20~40g未満(日本酒なら1~2合程度)であれば、酒を飲まない人とほぼ変わらないという結果が出ている。なお、HDLコレステロールは飲酒量が上がるほど増加、LDLコレステロールは減少する傾向が見られた。
■おつまみを食べ過ぎる人は危ない?
左党にとっては印籠を渡されたような気分だが、「じゃあ、なんで酒飲みは中性脂肪が高いの?」という疑問が残る。「酒飲みは中性脂肪が高い」というのは私の周りだけだったのだろうか。もちろん「飲み過ぎ」の人もいるだろうが……。栗原さんに疑問をぶつけると、明快な回答が返ってきた。
「答えは簡単。おつまみを食べ過ぎているんです。最初からポテトサラダを食べちゃうような人は、たいがい中性脂肪が高いですね。お酒を飲まない人でも、食べ過ぎの人は中性脂肪が高くなりがちです」(栗原さん)
そうか、中性脂肪の元凶は「おつまみ」、要は食べ過ぎだったのか! 居酒屋に行ってまずポテトサラダを頼む筆者にとっては耳が痛い……。
◇ ◇ ◇
とはいえ、中性脂肪を減らしたいなら、飲み過ぎは控えるにしても、適量までなら大丈夫と聞いてホッとした。左党の皆さんも今ごろ、胸をなでおろしているのではないだろうか? むしろ、おつまみが問題だったというのは、かねてから「注意するのは酒よりおつまみ!」と訴えていた私にとってもうれしい結論だ。
では、具体的におつまみ・食事をどうすればいいのだろうか。当然、食事だけでなく、運動面でも対策をしたほうがいいだろう。後編では、これら、具体的な対策について、栗原さんに引き続き話を聞いていく。
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