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気になる感染症について、がん・感染症センター都立駒込病院感染症科部長の今村顕史さんに聞く本連載。今回のテーマは「海外渡航と感染症」。近年は日本から世界各国へ渡航する人が増え、海外からも多くの外国人旅行者が日本を訪れるようになっている。海外渡航がより身近になった今、感染症から身を守るための情報を知っておくことが必要だ。特に、夏休みに海外旅行を予定している人は、事前に必要な準備や現地での対策、帰国後の体調不良が現れた場合の対応について心得ておきたい。
【ココがポイント!】
●海外渡航前には、渡航先の感染症情報を余裕を持って調べておく
●ワクチンで防げる感染症は、免疫が十分でなければ予防接種を
●衛生状態の悪い地域では、生水や氷、サラダなど生の食べ物に注意
●肉や魚介類を食べるときは、十分加熱したものを
●蚊やダニに刺されないよう、肌の露出は少なめに。蚊は効力の高い虫よけ剤で防御する
●野生の動物や鳥にはむやみに触れない
●帰国後に体調不良を感じたときは、トラベルクリニックや感染症科のある医療機関に連絡をしてから受診を
●日本国内でも、海外から持ち込まれる輸入感染症への注意が必要
■事前に渡航先の感染症情報を調べておこう
――夏休みを前に、海外旅行を予定している人も多いと思います。そこで今回は、「海外渡航と感染症」をテーマにお話を伺います。
世界では様々な感染症が流行しています。2018年の春に沖縄から感染が広がった麻疹(はしか)は、台湾からの旅行者により持ち込まれました。この連載の第1回「はしか流行 感染を防ぐには予防接種が必須」で解説した通り、日本の麻疹は2015年から、3年以上国内由来の発生がない「排除状態」となっています。しかし、海外ではいまだに流行している国や地域があり、特に報告数が多いのは、中国、インド、モンゴル、パキスタン、ナイジェリアなどです[注1]。最近では、日本人観光客もよく訪れるフランスやイタリアなどのヨーロッパ諸国でも流行が見られています。
日本と衛生環境が大きく異なる地域では常に感染症のリスクがありますし、亜熱帯・熱帯地域などでは日本では見られない感染症も多く存在します。海外へ渡航する前には、訪れる国や地域で発生している感染症についての情報を知っておくことが必要です。
――自分が訪れる国や地域で流行している感染症などの情報は、どのように入手すればいいでしょうか。
お勧めできるのは、厚生労働省検疫所が開設している「FORTH」( https://www.forth.go.jp/index.html )のホームページです。FORTHでは海外の感染症の最新動向や予防法などについて情報提供を行っています。
トップページに示されている世界地図から渡航を予定している地域を選択すると、現地の感染症の流行状況や気をつけたい感染症についての情報をはじめ、接種しておきたいワクチンの情報なども示されています。
■ワクチンで防げる感染症は予防接種を
――海外渡航前には、予防接種を受けておいたほうがよいのでしょうか。
[注1]厚生労働省ホームページ内「麻しんについて」のQ5(海外渡航に際して、麻しんについて注意すべきことはありますか?)
ワクチンで防げる感染症については、早めに接種しておくといいでしょう。例えば、衛生状態の悪い地域で感染のリスクが高いA型肝炎は、かつては日本でも流行していたので高齢の方の多くは抗体を持っていますが、若い人は感染のリスクがあります。A型肝炎ワクチンは、2~4週間の間隔で2回の接種が必要です。さらに、半年後に3回目を接種すると免疫が強化されて、5年間は有効とされています。
麻疹や風疹なども、これまでかかったことがない人や、予防接種の回数が1回以下の人は、免疫がないか不十分なので、やはり渡航の2~4週間以上前にMR(麻疹風疹混合)ワクチンを接種しておくといいでしょう(どんな人が予防接種が必要かについての詳細は「はしか流行 感染を防ぐには予防接種が必須」参照)。
予防接種はワクチンの種類によって、必要な回数や間隔が異なります。また、黄熱が流行しているアフリカや南米の熱帯地域では、入国の際などに英文の予防接種証明書の提示を求められる場合があるので、医療機関に発行してもらう必要があります。渡航先の感染症に関する情報は、なるべく早めに確認して、余裕を持って準備をするようにしてください。
――予防接種を受けたい場合は、どうしたらよいでしょうか。
海外渡航者を対象としたトラベルクリニックや、感染症科などの渡航感染症を扱っている医療機関を受診して相談します。FORTHのサイトのトップページにある「海外渡航者向けの予防接種実施機関(検索)」でも全国の医療機関を検索できるので、お住まいの都道府県や受けたいワクチンなどの条件を選択して調べてみるといいでしょう。
■飲料水だけでなく、氷やサラダにもリスクが
――渡航先で感染を防ぐためには、どのような注意が必要でしょうか。
それにはまず、主な感染の原因を知っておくことです。感染の主な経路は、次の3つに分けられます。
【病原体に汚染された飲み水や食べ物による感染】
A型肝炎、赤痢、コレラ、腸チフスなど
【蚊やダニなどを介しての感染】
「蚊」…デング熱、ジカウイルス感染症、マラリア、黄熱など
「ダニ」…ダニ媒介性脳炎、ライム病、ツツガムシ病など
【動物を介しての感染】
「ラクダ」…中東呼吸器症候群(MERS)
「犬、コウモリ、アライグマなど」…狂犬病
「ニワトリ」…鳥インフルエンザ
――なるほど、感染の原因によって、必要な対策も違ってきますね。
その通りです。A型肝炎や赤痢、コレラなど飲み水や食べ物による感染を防ぐには、衛生状態の悪い地域では、生水や生ものは口にしないようにします。
ただ、飲料水に気をつけていても、感染するケースがあります。例えば、汚染された水道水で氷を作っていたり、野菜やフルーツを洗っていたりすると、氷やサラダ、カットフルーツなどを口にすることでも感染するリスクがあります。
また、アジア地域では屋台を訪れるのも旅の楽しみの一つかもしれませんが、屋台は店舗とは衛生環境が異なるので、十分注意が必要です。特に、肉や魚介類は、しっかり加熱されたものを食べるようにしてください。
■虫よけ剤は、効力の高いものを選ぶ
――蚊やダニによる感染対策はいかがでしょうか。
蚊やダニが多い場所に行く場合は、長袖シャツと長ズボンを着用するなど、できるだけ肌の露出を少なくしましょう。また、蚊が媒介するデング熱やジカウイルス感染症を防ぐには防除用医薬品の虫よけ剤(忌避剤)が有効です。日本国内で販売されている虫よけ剤は、主成分がディートのものと、イカリジンのものの2種類があります。
デング熱は日本国内でも2014年に、東京の代々木公園を中心に流行したのを覚えている人も多いでしょう。日本ではそれを契機に、効力の高いディート30%やイカリジン15%の虫よけ剤が承認、販売されました。いずれも約6時間程度の効力が持続しますが、ディート30%の製品は12歳未満には使用しないよう推奨されているので、お子さんがいる場合はイカリジン15%の製品を選ぶといいでしょう(「蚊の虫よけ剤、濃度で違う プロが教える賢い使い分け」参照)。ただし、効力が長く持続するといっても、汗をかいたり水に濡れたりした場合は、つけ直す必要があります。
いずれにしても、虫よけ剤は製品の使用上の注意に明記されている対象害虫や成分、用法などを確認してから購入・使用するようにしてください。
――野生動物や鳥などを介しての感染を防ぐためには、どのような注意が必要でしょう。
2015年に韓国でも流行した中東呼吸器症候群(MERS)は、中東地域を訪れた1人の男性から感染が拡大しました。MERSを引き起こすコロナウイルスは、中東地域のヒトコブラクダが主な発生源となっているので、中東地域を訪れる際はラクダとの接触を避け、ラクダの未加熱肉や未殺菌乳なども口にしないよう注意します。
日本では狂犬病は輸入感染症となっており、それも2006年にフィリピンへの渡航者が帰国後に発症した事例以来、10年以上発生報告はありません。ただし、日本やオーストラリア、ニュージーランドなどの一部の国や地域を除いては、世界中で発生していて感染のリスクがあります。狂犬病は発症すると、ほぼ100%死亡する恐ろしい病気です。
狂犬病という名前から、犬にかまれなければ大丈夫だと思われがちですが、狂犬病のウイルスは犬に限らず、コウモリやアライグマをはじめとする多くの哺乳動物の唾液に含まれています。従って、野生の動物や鳥にもむやみに触れないようにしてください。
■帰国後、2週間程度は下痢、発熱、発疹などに注意
――感染症にかかると、どのような症状が表れますか。
感染症の種類によって、感染してから発症するまでの潜伏期間や、出現する症状も様々なので一概には言えませんが、数日から2週間以内が多く、病気によっては1カ月以上で発症するものもあります。代表的な症状は、下痢、発熱、発疹で、腹痛や嘔吐(おうと)などを伴うこともあります。
日本でも流行したデング熱を一例として挙げると、ウイルスを持ったネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されて発症する場合は、1週間程度の潜伏期間のあと、40度程度の高熱が出て、頭痛や関節痛などの症状が表れます。その後、数日で解熱し、回復していく過程では発疹が見られます。デング熱患者の一部は重症化することがあり、まれに死亡することもあります。
狂犬病はウイルスを保有する動物にかまれたり引っかかれたりすることで感染し、脳炎を発症すると、ほぼ100%死亡してしまいます。ウイルスは傷口から神経を介してゆっくり脳に向かうため、かまれる場所によって発症までの期間は異なります。例えば、手をかまれたときには、発症までに数カ月かかることもあります。
――海外渡航後に下痢、発熱、発疹などの症状が表れた場合、どのように対応すればよいでしょうか。
まずは、海外渡航後の感染症に対応しているトラベルクリニックや感染症科のある医療機関に連絡をしてください。先ほどご紹介したFORTHの「海外渡航者向けの予防接種実施機関(検索)」で検索できる医療機関では対応が可能だと思いますが、最寄りの医療機関が見つからない場合などは、保健所に連絡をして相談してもいいでしょう。そして、渡航した国や地域、渡航期間、症状が表れた時期、症状の経過や現状を伝えます。専門の医療機関であれば、それらの情報から感染の有無を判断しやすくなります。
感染症の可能性があり、受診を指示された場合は、マスクを着用する、一般とは違う窓口で受付をするなど、受診の方法も確認してください。いきなり受診してしまうと、感染を拡大させる恐れがあります。
■海外から持ち込まれる感染症にも気をつけて
――今村先生は、麻疹など海外から持ち込まれる輸入感染症への注意も呼びかけていらっしゃいますね。
近年は海外からの旅行者が増え、これからは東京オリンピック・パラリンピックの観戦者などさらに多くの人が日本を訪れます。そうしたときには、海外から様々な感染症が持ち込まれるリスクも高くなります。
例えば、東京オリンピックは日本では真夏に開催されることになりますが、季節が冬となる南半球の国や地域から訪れる人によって、インフルエンザが拡大する可能性もあります。さらに、東南アジアでは1年を通じてインフルエンザが発生しているので、季節を問わず注意する必要があります。
今後は海外でも日本でも、感染症に関する正しい知識と対応を知っておくことが、ますます大切になってくるでしょう。
http://www.henshikou.com/blog/blog_20190401_10
気になる感染症について、がん・感染症センター 都立駒込病院感染症科部長の今村顕史さんに聞く本連載。今回は特別編として、西日本を中心に甚大な被害をもたらした7月の西日本豪雨被災地における感染症対策について聞いた。
【ココがポイント!】
●被災直後としばらくたったあとでは、発生しやすい感染症が変わってくる
●家屋や土砂などの片付け作業では、できるだけ肌の露出を防ぎ、ゴーグルやマスクで目・鼻・口を保護する
●食中毒対策では、手洗いの徹底・食材の十分な加熱を
●大鍋で調理するときは、熱に強いウエルシュ菌の増殖に注意
●おにぎりは素手で握らず、ラップや使い捨て手袋を使用する
●感染症予防には手洗いやマスクの着用が基本
●下痢、嘔吐(おうと)、発熱、せきなどの症状が表れた場合は、早めに医療スタッフに相談する
■被災直後とは変わってくる感染症リスク
――記録的な豪雨により甚大な被害が発生した西日本の被災地では、発生から10日以上が経過した今なお避難生活を余儀なくされている地域があるなど、困難な状況が続いています。災害後は衛生環境の悪化などから感染症の発生リスクが高まるといわれますが、どのような感染症に注意が必要でしょうか。
今回のような広域災害では、地域によって被害状況や被災後の生活環境などが異なります。そうした中では、それぞれの状況に応じてできる対策を行い、感染症の発生や拡大のリスクを減らしていくことが大切です。
自宅や地域の片付け作業などに追われていると、感染症対策への意識が薄れがちです。しかし、通常の生活を送っているときでも、感染症を発症すれば苦しいものです。ましてや、避難生活や安息できない状況の中で発症すれば、さらにつらい思いをすることになってしまいます。そうした事態を避けるためにも、できる範囲で感染症対策を心がけてほしいと思います。
まず知っておいていただきたいのは、豪雨災害が発生した直後と、ある程度の時間が経過した現在、そしてこれからでは、発生しやすい感染症が変わっていくということです。
――どのように変化していくのでしょうか。
豪雨災害の直後は、死亡率の高い「破傷風」のほか、腎炎や肝炎を起こす「レプトスピラ症」、重症の肺炎を起こす「レジオネラ症」といった感染症への注意が必要です。これらは主に、倒壊した家屋のがれきや流れ込んだ土砂などを処理する際に感染のリスクが高くなります。
ですから、片付け作業を行うときには、土壌の中などに潜む病原菌が体内に侵入したり、病原体に汚染された水や土壌と接触したりするのを防ぐために、皮膚に深い傷を負ったり、粉じんを吸い込んだりしないような対策を行います。
例えば、できるだけ肌の露出を避けるように長袖長ズボンを着用する、厚手の手袋をつける、底の厚い靴を履く、目・鼻・口を保護するゴーグルやマスクを着用するなどです。猛暑の中での作業にこれらの服装や装備を徹底するのは大変だと思いますが、感染症から身を守るためには大切な対策となります。
西日本はもともと、ツツガムシ病や日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)など、ダニが媒介する感染症が多い傾向があります。山に近い場所で作業する際にも、ダニによる被害予防のために、肌の露出は避けるようにしてください。
土砂の処理や家の片付けなどが進んでくると、災害時の環境などによる感染症のリスクは徐々に低下し、食中毒やいわゆる風邪をはじめとする呼吸器の感染症など、一般的な流行感染症の延長での注意が必要になってきます。
特に、被災後で水回りなどの衛生環境や食材の保存状態が普段よりも悪化している状況では、より食中毒のリスクが高まります。
■手洗いにはアルコール性手指衛生剤を活用
――食中毒の予防には、どのような対策が有効でしょうか。
暑さが続くこの季節、日常生活での食中毒対策と同様に、調理や食事の前、トイレの後やおむつの処理後などに手洗いを行うことや、食材を十分に加熱し、生ものは避けるといったことが大切です。
ただ、ウエルシュ菌という食中毒の原因菌は、100度で加熱しても死滅せず、40~50度の高温で増殖しやすい特徴があります。炊き出しでカレーや煮物などを大きな鍋で大量に作る場合には、ゆっくり温度が下がる過程で菌が増えてしまうので、早めに食べきる、すぐに小分けにしてしまう、できるだけ素早く冷ますといった工夫をするといいでしょう。
また、災害後は、避難所で作られるおにぎりによる食中毒がしばしば発生します。これは、もともと人の手に常在している黄色ブドウ球菌が原因となるので、おにぎりを作る際には素手は避け、ラップや使い捨て手袋を使うようにします。
手洗いはほとんどのウイルスや細菌に有効なので、食中毒の予防だけでなく、様々な感染症対策の基本となります。
目に見える汚れはできれば水で洗い流せるといいのですが、水が十分にない場合は、まず汚れを拭き取ります。手についた菌やウイルスは、アルコールを含むウエットティッシュや、アルコール性手指衛生剤を活用して消毒するのがお勧めです。その際は、目・口・鼻に触れやすい指先をきれいに拭くようにします。
被災地では結膜炎や呼吸器感染症の報告があるようですが、手洗いはそれらにも有効です。結膜炎の予防には汚れた手で目に触れないように注意して、片付けなどの作業時にはゴーグルやメガネで目を保護します。また、呼吸器感染症の予防には手洗いに加えて、マスクの着用が有効です。マスクがない場合には、「人に向かってせきをしない」「せきをするときは手で口を覆うのは避け、ティッシュや肘の内側で覆うようにする」といったことを心がけてください。
■下痢などの症状が表れたら早めに伝える
――下痢や嘔吐など食中毒を疑う症状が表れた場合は、どうすればいいでしょう。
下痢や嘔吐などの症状が出た場合は、脱水状態にならないように注意し、できれば速やかに医療スタッフに相談をしてください。通常は、食中毒の原因菌が自然に排出されたほうが回復が早いので、下痢止めや抗菌薬は使わないのが一般的です。ただ、災害時には水不足などが生じ、下痢による脱水対策のポイントとなる十分な水分摂取ができないこともあるので、必要に応じて薬剤を使用することもあります。治療や二次感染を防ぐためにも、早めに医療スタッフに相談してほしいと思います。下痢やおう吐だけでなく、咳や発熱といった症状が出た場合も同様です。
被災後は、普段の生活よりも栄養状態が悪化していたり、猛暑や復旧作業による疲労の蓄積や体力の低下があったりすることも多く、その場合はより感染症にかかりやすくなります。特に、避難所で集団生活を送っている場合は、感染症が発症すると流行が拡大しやすくもなります。
大変なときだけに、周囲への気遣いから症状や体調不良を訴えるのを遠慮してしまう人もいますが、感染症への対応が遅れると、重症化したり、結果的にほかの人へ感染を広げてしまったりする恐れがあります。下痢や嘔吐、発熱やせきといった症状が表れたときには、早めに医療スタッフや周りの人に伝えることも、重要な感染症対策となります。
(ライター 田村知子)
http://www.henshikou.com/blog/blog_20190401_11
今年3月に始まった、海外渡航者からのはしか(麻疹)の流行は記憶に新しい。夏休みを前に、楽しいはずの海外旅行で思わぬ感染症にかからないようにするため、事前の準備と現地での対策を知っておこう。
外国人旅行者から感染を繰り返し、沖縄から感染が広がったはしか。日本は2015年以降、国内土着のウイルスによるはしかの発生が3年以上ない「排除状態」にあるが「国外にはそうではない地域が少なくない。はしかに限らず、海外旅行の際は様々な感染症への注意が必要だ」と川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は指摘する。
国外の旅先で感染症にならないために、旅行前と現地での対策が欠かせない。旅行前に重要なのがワクチン接種だ。「はしかや風疹、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)などは、かかったことがなく接種回数が1回以下の人は受けた方がいい」とトラベルクリニック新横浜(横浜市)の古賀才博院長は強調する。はしかは感染力が強く、広がりやすい。妊娠初期の女性が風疹に感染すると、胎児が先天性の障害を起こす可能性が高くなる。
岡部所長によると「はしかは20~40代、風疹は20~40代と1979年4月1日以前に生まれた男性のワクチン接種率が低い。おたふくかぜは任意接種のため、受けていない人もいる」。母子手帳で接種歴を確認しよう。「接種歴が不明の場合、抗体検査もできるが時間や費用がかかるので、念のため接種するとよい」
渡航先で流行している感染症のワクチン接種も大切だ。狂犬病やA型肝炎、腸チフスのワクチンなどだ。厚生労働省検疫所のサイト「FORTH」などが発信する地域別の感染症流行情報を確認しよう。
ワクチンの効果を十分に得るため、接種は渡航の2~4週間前までに済ませたい。「複数のワクチンを接種する場合、種類によってきまりがある。渡航外来で早めに相談を」と古賀院長は話す。
マラリアが流行する熱帯・亜熱帯地域に行く場合は、予防薬を処方してもらい、渡航前から帰国後まで服用する。重症化すれば死に至ることもあるので準備が必要だ。
ワクチンや予防薬での対策が難しい感染症は、滞在先での留意が必要だ。ジカ熱やデング熱、ダニ媒介性脳炎といった蚊やダニが媒介する感染症は、防虫対策が必須になる。現地では長袖や長ズボンで皮膚の露出を避け、虫よけ薬や蚊帳などを使う。
虫よけ薬と日焼け止めと一緒に使う際は「虫よけ成分の蒸散を妨げないために、まず日焼け止めを塗り、上から虫よけを使って」と古賀院長は勧める。虫よけ成分のディートの濃度が高い虫よけ薬ほど、効果が長く続く。ただし、子供の場合は1日に使える回数が限られるほか、6カ月未満の乳児には使えない。
旅行先では生ものや生水を口にしないことや、むやみに動物に触らないことも大切。「狂犬病ウイルスは、犬に限らず、ほ乳類全てが持っている可能性がある。子供連れの場合は特に、目を離さないように注意する」(岡部所長)
旅行中や帰国後に病気になった場合には、速やかに受診する。「渡航先で受診する時には、接種したワクチンの申告を」(古賀院長)。帰国後の受診時は、渡航先や日程、どんな症状がいつ出たかを医師に伝えよう。
旅行先で感染症にかからないために最も重要なのは、旅行先での感染症の流行情報や病気に関する正しい知識を持つこと。古賀院長は「感染経路を知っていれば、旅行前も旅行中も適切に対応できる。事前の情報収集が『知識のワクチン』につながる」と強調する。
http://www.henshikou.com/blog/blog_20190401_12
スーちゃん テレビでがんに苦しんでいる患者(かんじゃ)さんを見たよ。日本人の半分が一生のうちに1回はがんになるんだってね。なぜそんなに多くの人ががんになるのかな。がんはどうやってできて、何で体に悪いんだろう。治す方法はあるのかな。
■細胞が増えすぎて、体の働きを邪魔するんだ
森羅万象博士より 人間の体は目に見えない小さな「細胞(さいぼう)」が集まってできている。皮膚(ひふ)や筋肉(きんにく)、脳(のう)や心臓(しんぞう)もすべて色々な種類の細胞がたくさん集まったものなんだ。1人の体には、37兆個もあるといわれているよ。例えば、世界に住む全ての人の数が約75億人だから、その5000倍にもなるんだ。
一つ一つの細胞には寿命(じゅみょう)がある。死んで減った分を補(おぎな)うため、小腸や大腸、皮膚や赤血球などそれぞれの細胞は「細胞分裂(さいぼうぶんれつ)」ということをして数を増やすんだ。1個の細胞が分かれて2個になり、さらに4個になるということをくり返すんだ。
増える速さは細胞によって違う。細胞の中にある「遺伝子(いでんし)」が関係しているんだ。遺伝子には人間の体をどう作るかを決める情報がつまっている。人間には2万5000個もの遺伝子があるよ。正常な細胞は遺伝子にしたがって正しい速さで増える。おかげで人間は、体や内臓(ないぞう)などの形や働きを保ったまま生活できるんだ。
がん細胞はこの遺伝子の情報がおかしくなることで生まれるんだ。がん細胞は正常なときとはちがって、細胞分裂をくり返してどんどん増殖(ぞうしょく)する。それが大きなかたまりになって、目に見えるほどの大きさのがんになるんだ。
がんは食道や胃、腸、心臓(しんぞう)や骨など体の様々な場所にできる。脳や血液のがんもあるんだよ。日本人で多いのは、男性では胃、肺、大腸。女性では乳房(にゅうぼう)、大腸、胃のがんが多いよ。がんができた場所は正常な働きができなくなって、体全体の健康を維持(いじ)することが難(むずか)しくなってくる。がんが大きくなって症状(しょうじょう)が悪化すると、亡(な)くなることもある。日本人の3人に1人はがんで亡くなる。たいへん大きな病気なんだ。
実は、人間の体では毎日、目に見えない小さいがんがいくつもできているんだ。それでもすぐに体がおかしくならないのは、遺伝子の傷(きず)を元通りに治す力が、体にもともとあるからなんだ。だけど、傷が多すぎると治しきれず、遺伝子がおかしなままになり、がんができる。年をとるほど遺伝子の傷を治しきれなくなって、がんになる可能性が高まるんだ。
がんのなりやすさには、いろいろな原因が関係しているよ。たばこやお酒、塩分をたくさん体に入れたりすると、遺伝子に傷が付きやすくなる。放射線(ほうしゃせん)や紫外線(しがいせん)も悪い影響(えいきょう)があるよ。特に場所によっては深く関係するものが分かっているんだ。胃がんはピロリ菌(きん)という細菌によって起こる場合がほとんど。女性がなる子宮けいがんは「ヒトパピローマウイルス」というウイルスが大きな原因なんだ。
日ごろの生活習慣も影響しているよ。まず悪いのはたばこ。自分がすわなくても、他の人がすったたばこの煙(けむり)をすうだけでも悪影響(あくえいきょう)がある。肺だけでなく胃、すい臓(ぞう)など様々ながんになる可能性を高めてしまうんだ。お酒の飲み過ぎは食道、肝臓(かんぞう)、大腸のがんにつながる。塩からい食べ物をひかえることも大事だよ。
がんを治すときには、がんを取りのぞく手術をしたり、抗(こう)がん剤(ざい)や放射線(ほうしゃせん)を利用してがんを攻撃(こうげき)してたおしたりするよ。早いうちに見つかれば治る可能性は高い。
だからできるだけ予防し、早く見つけることが大切なんだ。胃がんを起こすピロリ菌が体にいないか検査し、いたときは退治する治療(ちりょう)を受ける。肝臓に悪影響をおよぼす肝炎(かんえん)ウイルスも調べる。子宮けいがんを起こすウイルスの予防接種もあるよ。
大人になったら、がんの検診(けんしん)を受けよう。子宮けいがんは20歳(さい)以上の女性、乳(にゅう)がんは40歳以上の女性、胃や肺、大腸は40歳以上の男女に、国は検診をすすめている。心配な人はお医者さんに相談するといいよ。インターネットや本などには、がんについて様々な情報がのっている。中にはまちがったものもあるので、複数のお医者さんに話を聞いて確かめるのが大切なんだ。
http://www.henshikou.com/blog/blog_20190401_13
この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください!
【問題】人間ドックには様々なオプション検査が用意されていますが、どの検査を選べばいいか迷った時に、考慮すべき「リスク因子」は大きく4つあります。それらは「年齢」「性別」「生活習慣」と、あと1つは何でしょう?
正解は、家族歴(血縁者に起こった重大な病気) です。
■2親等以内の重大な病気は、自分にとって高リスク
人間ドックでは、基本の検査項目でほとんどの生活習慣病やがんを網羅できますが、残念ながら、それで完璧というわけではありません。例えば、がんの中でも死亡数が多い大腸がんを調べたいと思ったら、便潜血検査だけでなく、大腸内視鏡検査などを受けた方が発見率は高まります。同じく死亡数の多い肺がんも、胸部X線検査に胸部CT検査を併用した方が早期の段階で見つけやすくなります。
胃がんのリスクを知るためにはピロリ菌の検査も一度は受けておきたいですし、肝臓がんは、肝炎ウイルスによるものが多いため、一度は必ず感染の有無を確認すべきでしょう。男性特有・女性特有のがんの検査も基本項目には含まれていないので、女性であれば、乳がんや子宮頸がん、男性なら前立腺がんはチェックしておきたいところです。
そこで上手に取り入れたいのが、オプション検査です。オプション検査は主に、(1)各種がん、(2)動脈硬化など循環器系の異常、(3)その他(認知症、骨粗しょう症など)―をさらに詳しく調べるものに分かれます。
オプション検査は、施設によっても多種多様で、すべてを受けようと思ったら、体への負担も大きく、費用も高額になります。現実的な選択は、自分にとって、よりなりやすい(リスクが高い)病気から、優先的に調べていくことでしょう。
三井記念病院総合健診センター特任顧問で日本人間ドック学会副理事長の山門實氏によると、個人によって異なるリスク因子の中で、特に重視したいのは、年齢、性別、生活習慣、家族歴の4つです(下表)。
例えば、胃がん、肺がん、大腸がんなど一般的ながんやメタボリックシンドローム、生活習慣病は、年齢を重ねるにつれリスクが高くなります。一般に、40代になったらこれらの病気のリスクは常に意識したいところです。ただし、乳がん、子宮頸がんなど女性特有のがんは、20~30代の若い世代でも発症しやすいので、若いときから検査を受けておく必要があります。閉経後の女性では骨粗しょう症のリスクも高まります。
生活習慣なら、喫煙者は肺がん、喉頭がん、食道がんなどのリスクが非喫煙者よりはるかに高い上、メタボにもなりやすいことが知られています。となれば、胸部X線検査よりも早期肺がんを見つけやすい胸部CT検査や、動脈硬化の進行具合を調べる動脈硬化ドックをオプションで選択したほうがよいというわけです。肥満、多量飲酒も、様々ながんや生活習慣病のリスク因子になります。
リスクの判断には、家族歴も重要です。「家族歴は、つまり遺伝情報です。2親等以内の血縁者に起こった重大な病気は、自分にとって高リスクと考えてください」と山門氏。例えば、祖父が肺がんで亡くなっている人は、ほかの人よりも肺がんになるリスクが高くなります。家族歴がある病気は、年齢にかかわらず、若いうちからチェックしておいた方がいいでしょう。
以上の点を考慮して、上手なオプション検査選びをしていきましょう。
http://www.henshikou.com/blog/blog_20190401_14