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忘年会のシーズンがやってきた。楽しい酒宴についつい飲み過ぎて、同僚からひんしゅくを買ったり、二日酔いで苦しんだりした経験を持つ人もいるだろう。できるだけ体に負担をかけない飲み方とは何か、専門家の話を聞いた。
適度な飲酒は緊張を解き、楽しい気分にさせてくれる。また、国際医療福祉大学教授で山王病院(東京都港区)内科部長の堀江義則さんは「過剰な飲酒は様々な臓器の障害の原因になるが、適度なら、いくつかの疾病リスク(病気にかかる可能性)を低下させることが疫学研究で明らかになっている」と話す。
適度とはどれぐらいか。医学の世界で使われる酒量の「ものさし」は、純粋なアルコール20グラムで1単位。日本酒(15度)なら1合、ビール(5度)なら500ミリリットルが1単位という具合だ。
過去の疫学研究では、狭心症など虚血性心疾患や2型糖尿病の発症リスクは、1日に「適量の飲酒をした場合」の方が「全く飲まない場合」より低いとされる医療機関などの報告がある。
■事故死の恐れも
高尿酸血症の発症リスクで「全く飲まない」場合が最も低いなど、飲酒の効果が存在しない病気もある。堀江さんは、アルコールの代謝能力に個人差があることを明確にしたうえで、「総合的に考えると1日1~2単位までなら効果も期待できるが、1日3単位以上ではそれが帳消しになると考えてほしい」と話す。
アルコール摂取の適量については、公的機関などで、1単位、あるいは2単位程度をメドとする見解もある。
1日5単位、6単位はまさに過剰な飲酒。疫学研究ではがん、脳血管障害、事故による死亡などのリスクを高めることが分かっているが、専門家が危惧するのはやはり肝障害だ。日本では1960年代以降、アルコール総消費量が増加し、現在も高水準。そのため飲酒が原因の肝硬変など重大な肝臓疾患も多い。
男性に比べアルコールの代謝能力が低い女性や高齢者は要注意だ。とくに妊婦は飲酒を避けるべき。内臓脂肪の蓄積が原因で脂肪肝を発症している人は専門医の指導が必要だ。
最近、飲酒が原因でない脂肪肝のなかに肝硬変になりやすいタイプ、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)があることが分かってきた。この非アルコールという言葉から、飲酒とは無関係と考える人も多いが、「NASHタイプの人が少量でも飲酒すると、肝硬変のリスクを大幅に高める」(堀江さん)。
では、どうやって飲んだ量を把握するか。同じ種類の酒を飲んでいるうちは頭の中で大体の量がわかるが、いくつもの種類を飲むと混乱する。アルコールの単位でどれぐらいかを意識すると飲み過ぎを予防しやすい。
多くの専門家が指摘するのは「食事をしながら楽しく飲む」こと。とくに豆腐、魚、肉などの高タンパク質のものは肝細胞の再生を促すという。
水分補給も大切だ。水割りなどを飲むと、水分ばかりのような気がするが、アルコールは利尿を促し、水を排せつしようとするので、飲酒後は脱水症状になりがち。二日酔いのときも、まず水を飲んで静かに横になり、体が回復するのを待つ。
では、よくいわれる休肝日をつくれば大丈夫というのはどうだろう。堀江さんは「重要なのは摂取するアルコールの総量。毎日1単位をたしなむ程度なら休肝日を設けなくてもいいだろう。どうしてもたくさん飲んでしまう人には、1週間の総量を抑える休肝日は有効」と説く。
さて、新年を迎えるに当たって「今年こそ酒量を減らしたい」と願う人も少なくないだろう。しかし、ついつい飲み過ぎてしまうのが酒だ。肥前精神医療センター(佐賀県吉野ヶ里町)院長の杠(ゆずりは)岳文さんは「自分では減酒できないと諦めている人もいるが、医師などのサポートを受けて成功することも多い」と話す。
■日誌で酒量確認
例えば、身近な医師が人々の飲酒量のコントロールに積極的に関与する仕組みの一つが「ブリーフ・インターベンション」。相談者は問診票か、飲酒日誌を提示して、カウンセリングを受けながら週に何単位減らすという目標を立てる。
杠さんは「指導により多くの人が酒量を3分の2に減らせた。近年急増しているアルコール依存症になることも未然に防げるだろう」と期待する。興味のある人は、消化器内科などで相談してみてほしい。
◇ ◇
■栄養補助食品、過信は禁物
ウコンエキス、シジミなどに含まれるオルニチン、ゴマ成分など、飲酒の影響を軽減するという栄養補助食品を利用している人も多い。臨床研究によって、アルコールの分解を促進する効果などが認められているものもあるが、何単位ものアルコールの影響を解消できるわけではない。
堀江さんは「あくまでも比喩だが、栄養補助食品で酒の影響を1割減らすより、酒の量を3割減らす方が効果的」と話す。また、栄養補助食品の中には、肝機能が低下した人が使用すると危険な場合もある。使うとしてもあくまで補助的なものと認識し、同時に酒量も減らそうと考えるのが「大人の飲み方」だ。
(ライター 荒川 直樹)
[日経プラスワン2014年12月13日付]
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