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パートナーの手を握るシニア夫婦が増えている。結婚当初の夫婦ならともかく、長い夫婦生活を経た男女が手を握り合ったり、ましてや人前にその姿を見せるのは気恥ずかしいはず。そんな夫婦がお互いの手のぬくもりを求める理由とは……。
「きょうも仕事ご苦労さん」と夫は語りかけ、妻の手をぎゅっと握る。「お酒は控えて、体を大事にして」と妻はほほ笑みながら答える。
茨城県石岡市で、有機食材の宅配会社、大地を守る会(千葉市)向けに地鶏を生産する谷中登さん(57)と妻の恵子さん(59)。結婚して30年になるこの夫婦が、「何十年ぶりか思い出せない」(恵子さん)という手を握りあったのは2011年の春。体調がすぐれなかった登さんがC型肝炎と診断された時だ。
入院先は同県土浦市。かすみがうら市内のスーパーでパート勤めの恵子さんは夕方、仕事後に車で病院に直行した。「働いた後、夜遅くまでそばにいてくれる妻に、ありがたみを感じた」という登さん。入院中のある日、妻の手を握って病院内をゆっくり歩きながら、「これからもよろしく頼むな」と伝えたそうだ。
もともとおしどり夫婦だが、夫婦のきずなを確認するにはスキンシップが一番と分かった。今では、恵子さんが仕事を終えて帰宅すると、自宅の庭を手をつないで歩く日々。病気をして体力が落ちたものの、自力で歩行できる。ただ、「妻の手の温かさが身にしみる」と話している。
仲むつまじい姿を写真におさめて、インターネット上に投稿するシニア夫婦もいる。
11月初旬、東京都武蔵野市の井の頭公園。大木哲雄さん(仮名、72)と浩子さん(同、同)は、手をつないで歩く姿の写真を持参したカメラで通りすがりの若者に撮ってもらった。撮影した若者は「大木さんたちは夫婦というよりも仲の良い兄妹という感じ」と、驚きながらも、ほほ笑ましいと感じたようだ。
写真は哲雄さんがフェイスブックにアップするという。「3年前、英国旅行した時に出会った、手を取り合う英国人夫婦が印象的だった。日本のシニアも、欧米流のコミュニケーション術を取り入れた方がいいと思い、自分たちがモデルになって発信している。私たちの姿を記録として残したいという気持ちもある」。哲雄さんはこう話す。
プロ、アマ問わず写真投稿を受け付け、引き合いがあれば販売するサイトを運営するピクスタ(東京・渋谷)によると、大木夫婦のような写真を投稿するシニアが増えているという。
国際化や働く女性の増加で、シニア男性の中にも夫婦は対等のパートナーであるとの考えが広がりつつある。妻を大事にする気持ちを言葉だけでなく、スキンシップという形で表現する男性が増えたとしてもおかしくない。
夫婦のきずなを再認識するのはもちろん、手を取り合わなければ生活そのものに支障をきたす場合もある。介護だ。東京都大田区に住む石井良男さん(82)は10月、介護保険で要支援2の妻、ヨシヱさん(80)の左手を握った。結婚当初以来、56年ぶりに妻の手を握った瞬間だった。
ヨシヱさんは足腰が弱り、つえをついて歩く日々。夫婦で喫茶店に入ろうと入り口の階段を上っている時、つまずいて転びそうになったので、とっさに良男さんの手が伸びた。「強く握ったので痛かったけれど、うれしかった」(ヨシヱさん)。2人は毎日、昼の散歩を欠かさない。昭和一ケタ世代の良男さんは多くを語らないが、妻の歩行で異変を感じたときは手を取り、体を支えているそうだ。
千葉YMCA理事長をはじめ、全国で50にのぼるボランティア団体の要職を務めた倉石昇さん(79)は、ボランティア活動に精を出す仲の良いシニア夫婦を何度も見てきた。「手をつなぐ夫婦は、団塊の世代が属する65~70歳が多い。これからは介護で80歳以上も手をつなぐようになる」と予測する。
11月22日は「いい夫婦の日」。これまでの夫婦関係を振り返り、そしてこれからの道のりに思いをはせ、互いの手を見つめてみるのも悪くない。
http://www.henshikou.com/blog/blog_20190402_39