[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
年末年始に海外旅行を計画している人や2月のソチ五輪(ロシア)、6月開幕のサッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会を現地で観戦する予定の人もいるだろう。海外では思わぬ感染症にかかるリスクがある。日本で予防接種をしておけば防げる例もあるので、大学や民間の病院などが設ける渡航者向けのトラベルクリニックなどを訪れて医師の助言に耳を傾けたい。
「日本人は海外旅行先での感染症などのリスクへの意識が足りない」。こう話すのは日本渡航医学会理事長を務める浜田篤郎・東京医科大学病院渡航者医療センター部長だ。海外に出発する前にかかりつけ医やトラベルクリニックに相談し対策を講ずるのは約2%。欧米の30~50%程度に比べるとかなり低い。
■ワクチン自己負担
予防用のワクチン接種に対する意識も低い。「同じ場所を以前に訪れた知人が大丈夫だったから、自分も接種しなくても平気だろうと思い込みがちだ」とザ・キング・クリニック(東京・渋谷)の近利雄院長は指摘する。
衛生状態が良い日本では忘れがちだが、海外では地域により様々な感染症が流行している。例えばW杯観戦でブラジル渡航を予定する人は「黄熱とA型肝炎、破傷風などのワクチンを接種したほうがよい」(浜田部長)。
黄熱ウイルスを持つ蚊に刺されてうつり、死亡するケースもある黄熱病は南米やアフリカで感染リスクが高い。食べ物で感染するA型肝炎も同様で、滞在期間にかかわらずワクチン接種が勧められる。
破傷風菌は世界中の土壌に分布しており、ケガをする危険はだれにでもある。「五輪観戦でロシアを訪れる人もワクチンを受けておけば安心につながる」(国立国際医療研究センター国際感染症センタートラベルクリニックの竹下望医師)。破傷風は国内でも1968年以降、定期接種の対象だが、効果は10年とされているため、追加で接種しておくとよいだろう。
各種のワクチンの費用は自己負担で、接種回数も種類により異なる。合計で数万円になるケースもある。
どのワクチンを接種するかは医師に相談して決めよう。「滞在先や期間、過ごし方などと、感染・発症により入院などを余儀なくされ、仕事や家事・育児を休むリスクを考慮して決める」(竹下医師)。特に狂犬病など死亡率が高い病気は要注意だ。発展途上国に渡航し犬などと接する可能性の高い人は接種を検討しよう。狂犬病ワクチンはかまれた後でも打てるが、事前接種が大切だ。
ワクチンは打ってから効果が出るまでに一定の日数がかかる。黄熱病などは生ワクチンで接種後しばらくは他のワクチンを打てない。このため接種スケジュールを考慮することが重要で、トラベルクリニックなどで相談するとわかりやすい。「できれば旅行の1~2カ月前までに受診してほしい」と竹下医師は訴える。
■帰国後発熱は受診
すべての感染症にワクチンがあるわけではない。例えば、熱帯や亜熱帯で広く流行するデング熱は蚊が媒介する。長袖・長ズボンを着用して肌の露出を少なくするとともに、虫よけスプレーや蚊帳を使用する。マラリアも同様だが、予防薬があるので必要に応じて服用してもよいという。
海外で問題が起こらず帰国した場合でも注意点がある。「帰国後1~2カ月以内の発熱は、海外でかかった感染症の可能性があるので、できるだけ専門の医療機関を受診したほうがよい」(竹下医師)
高齢者の海外旅行も一般的になったが、実は現地で発症しやすいのは心筋梗塞や肺炎などだ。持病の生活習慣病などを悪化させることもある。かかりつけ医に処方してもらった薬と英語の診断書などを携帯していると、もしもの際に役立つ。海外では入院費などが高額になることもあるので、保険も考えよう。
日本ではトラベルクリニックが十分整備されていない課題もあるが、せっかくの旅行を台無しにしないために「事前に検疫所や医療機関に相談し、正確な情報に基づいて対策をたててほしい」と浜田部長は話す。