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乳幼児向けの予防接種の種類が増える中、多くの保護者が悩むのがスケジュールづくりだ。2歳までに接種が推奨されているワクチンは現在10種程度。期間をおいて複数回、打つものもあり、ひとたび予定が狂えば、日程を組み直す必要がある。専門家らは「医療機関や民間団体の情報を活用するなどして効率よく接種し、幼い子供を感染症から守ってほしい」と呼びかけている。
東京都足立区の住宅街の一角にある和田小児科医院。平日午後3~4時の「予防接種受付時間」には、区内だけでなく、近隣自治体からも来院者があり、広い待合室は乳幼児を抱えた母親で混み合う。
相次ぐ承認
同医院は同時接種を推奨する医療機関のひとつ。「来院が月1回ですむので、とても助かっている」と話すのは同区内の主婦(39)。この日は6カ月の次女に「ヒブ(インフルエンザ菌b型)」「小児用肺炎球菌」「3種混合」の3種類のワクチンを同時接種するため来院した。「11歳になる長女の時はもっと少なかった。10種類をカバーしようとすると同時接種はやむを得ない」と話す。
予防接種のスケジュール管理が難しくなっているのは、厚生労働省が2007年以降、0歳時から接種できる「ヒブ」「小児用肺炎球菌」「ロタウイルス」などのワクチンを次々と承認したためだ。
これらは一定の間隔を空けて2~4回接種する必要がある。同医院の和田紀之医師(65)は「同時接種しなければ、生後6カ月までに計15回の通院が必要となり、保護者の負担が大きい」と指摘する。
乳幼児の予防接種を巡っては、昨年春、複数のワクチンを同時接種した乳幼児の死亡例が相次いで明らかになり、厚労省が一部の予防接種を見合わせる事態に発展。結果的に「明確な因果関係は認められない」として、1カ月後に再開した経緯がある。
日本赤十字社医療センター小児科の薗部友良医師は「同時接種の安全性は諸外国の事例で明らか」と強調。「世界保健機関(WHO)が推奨する世界標準のワクチン接種方法を国内でも実践してほしい」と厚労省などの関係機関に訴える。
ただ、こうした混乱を受け、同時接種に懐疑的な小児科医や保護者もいる。
予防接種制度は種類ばかりでなく、公費助成の仕組みなども変化が激しい。09年に民主党政権が誕生してから助成事業が次々と立ち上がったことで、1人目の子供と2人目とでは大きく変わっていることも珍しくない。住居を構える自治体による独自の費用補助もある。こうした中、最新の情報を求める保護者を支援する動きも広がっている。
スマホに自動表示
特定非営利活動法人(NPO法人)の「VPD(ワクチンで防げる病気)を知って、子供を守ろうの会」(東京・中央)はインターネットを使ってスケジュールを作成できる仕組みを一般公開している。
昨年12月にはNTTドコモと共同で、日程管理ができるスマートフォン向けのアプリを開発し、無料で公開。子供が生まれた日付を入力すれば、いつまでにどのワクチンを接種すべきかを自動的に表示してくれる仕組みだ。アラーム機能なども備えており、「保護者の面倒な作業をなくしたかった」と同会の中井麻子さん。サービス開始から半年間で約3万人がダウンロードして利用している。
20万部を発行する子育て情報月刊誌「ひよこクラブ」は年2~3回の頻度で予防接種特集を組み、「読者の一番の関心事」(仲村教子編集長)に応えている。4月号では約50ページの小冊子付録を付けて、先輩の経験談や推奨スケジュールを提案。「何度特集しても人気が衰えないコンテンツ」(同編集長)となっている。
国立感染症研究所感染症情報センターも「0~6歳」「小学生~高校生」「20歳未満」など、世代に応じた接種スケジュールをホームページで公開している。
スケジュールが逼迫して接種機会を逃すケースがある一方で、高額な費用負担によって接種を見送る保護者もいる。原則として公費負担のない「任意接種」では、1回あたり2万円のワクチンもあり、「情報不足を解消しても経済的な理由により、機会を逃している保護者も多い」(薗部医師)のが現状だ。
こうした状況を受け、厚労省は5月、ヒブと小児用肺炎球菌のワクチンを13年4月から原則無料にすることを決めた。さらに、ロタウイルスやB型肝炎についても、公費助成の検討を始めており、ワクチン格差の是正に向けた国の動きも本格化している。
任意接種、家計に重荷 自治体の助成 徐々に
予防接種には、法律に基づいて市区町村が実施する「定期接種」と、接種者が希望して受ける「任意接種」の2種類がある。定期接種の費用は公費で負担(所得などに応じ、一部自己負担がある場合もある)されるが、任意接種は基本的に全額自己負担となる。
NPO法人「VPDを知って、子どもを守ろうの会」が実施した調査では、回答した200人のうちの3割が、任意接種の注射を1回受けて窓口で実際に支払った金額について「2万5千~3万円」と答えた。
ワクチンによっては複数回打つ必要があり、家計にとって大きな負担となる。このため、任意接種に対する公費助成も徐々に始まっている。
ヒブや小児用肺炎球菌などのワクチンは2011年1月から、全国の自治体の多くが半額程度を補助。東京都渋谷区は全国でも数少ないロタウイルスワクチンの助成を始めている。
国立病院機構三重病院の庵原俊昭院長らの研究班の調査によると、公費助成が本格化した11年は、ヒブ感染症にかかる子供の割合がほぼ半分になり、肺炎球菌感染症では3割減となった。専門家らは「公費助成を広げれば、より多くの子どもの命と健康を守ることができる」と指摘している。
http://www.henshikou.com/blog/blog_20190402_56